都会を離れて

エッセイ・コラム

 建築設計事務所を大阪市内から奈良県桜井市に移転してもうすぐ3年になります。ふと思って行動に移したことですが、今回のような事態には、昔のように近隣関係が密な地域、昔の日本の共同体というのはとても安心なことがわかりました。住まいの地域一帯はほとんど、どういう方が住んでいらっしゃるかを皆様は把握しておられます。すると、もし自分が今回の肺炎になって、近隣に迷惑をかけてはいけないという意識を持ちますので、自然と病気にならないよう気を付けて暮らすことになります。私の知る限りの周りの方々は、初期から疫病に対しての防衛体制できちんとした暮らしをなさっており、危機管理能力が高いと思いました。都会からは消えつつありますが、田舎にはまだ日本の昔の良いところが残っており、このような機会に考え直す時期に来ているのではないかと思います。現代の日本人が捨て去ったものの中に、遠い昔から自然と共存し平和に暮らしていた古代の日本から伝わっている人類の叡智が含まれているのではないでしょうか。そのような叡智をもう一度呼び覚まし、一人一人の人間を大切にし合う国になってほしいと思います。