佐保会館と雨戸

建築

 佐保会館は昭和3年に奈良女子大学構内に建てられた同窓会館である。このたびの改修工事では1階座敷の庭に面した1本引きのガラス戸と雨戸、北側事務室と和室の引き違いガラス戸と雨戸は現況保存とした。昔からある雨戸は開閉時には、たびたび外に出なくてはならなく大変手間がかかる。また戸は順番に丁寧に収めないと戸袋に収納することができない。便利な現代生活に慣れた私達にはこの手間をかけるという行為が大変貴重なことだと思う。便利になった昨今、手間をかけることが出来るということ自体、とても贅沢なことなのだろう。
 電動でシャッターを閉めるのであれば、スイッチ一つで行為は終わる。それが、時には外に出て戸を引き送るとなると、今日は寒いなとか、夕焼けがきれいだとか、足元の花が咲いているなとか、外の世界によって、何かを感じなければ開閉することができないのである。そのようなほんの些細なことの積み重ねが、人格形成に影響しているように思えてならない。雨戸の保存が文化の継承だと考えるのはそのような理由からである。