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新建築「住宅特集」2010.03 掲載

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国産材を見直す
このたびの「木の住空間2010」は木のさまざまな使い方による住空間が提案され、木には多くの可能性があることを教えられた。特に「流星庵」は全て90㎜角の製材の木組みにより、美しく心地のよい住空間がつくられている。ルーバー状のフレームは使い方によっては室内に露出しすぎてうるさい感じになるが、この住宅は、玄関から浴室までの廊下を含んだ空間に限定され、バランスの良い配置になっている。天井下と床上に柱が露出するスリット状の開口部を持つ耐力壁「貫仕様構造用合板張り真壁」もまた名解答である。

新建築「住宅特集」2010.02 掲載

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Steel Truss を訪ねて 木村博昭+Ks Architects
「Steel Truss」は私にとって、とてもインパクトのある建物だ。鉄に対する私の既成概念をことごとく打ち砕いてくれたように思う。見学前に読んだ本誌の記事に「鉄はエッフェル塔に代表されたように、その美しさはレース模様の意匠と構造の一体性」とあったが、意匠と構造の一体性にまで理解が及ぶ以前に「エッフェル塔のレース模様の意匠」という時点で理解しがたかったが、見学した今はエッフェル塔のレース模様に肯けるから不思議である。

新建築「住宅特集」2010.01 掲載

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「住宅風景の転換」を読んで
「住宅風景の転換 家や暮らしが変わるとき」は興味深い特集でした。歴史上、日本の住宅は何をきっかけに、どのように変化したのかが建築史家によって、それぞれに述べられていました。内田青藏さんの「住まいそのものにも接客機能を排除した『家族だけの住まい』のひずみが現れ始めているように思う」、小沢朝江さんの「『接客』という行為は、家族が社会に対して開くこと、社会を招き入れることを意味する。住宅が社会的存在であり得るために、現代の『接客』のあり方とその空間が問われている」という話は非常に的を射た指摘でした。

新建築「住宅特集」2009.12 掲載

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「STONE TERRACE」をたずねて 土井一秀建築設計事務所
丘のような山の斜面で、「STONE TERRACE」は美しい風景となっていた。
広島市街を車で抜けると小高い山が次々と現れ、一時間ほど走ると石州瓦の屋根の民家が点在する。田圃の畦道より少し広い道を進むと、棚田の石積みが美しく並んでいる。結構急な斜面で、石積みの高さは高い。棚田の中腹には歴史を感じさせる母屋があり、その少し下に片流れの屋根をもつ、「STONE TERRACE」が埋め込まれていた。

新建築「住宅特集」2009.11 掲載

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キッチンと食卓
2009.10月号の特集「地域性と家」は、記事も作品も読み応えがありました。特にメールディスカッションは興味深く、参加者の方の選定もよかったこともあり、いろいろな地域での建築家の掘り下げた考えが述べられていて、地域性に応える住宅のあり方が浮き彫りになっていました。濱田修さんの「地域性を取り入れるためには、気候に向き合い建築的な方法で対応することが必要で、そうすると形態に特徴が生まれ、地域性がよいかたちで現れる。」「住宅が地域社会に影響を及ぼせるのは、取り次ぎ動線を含めた配置とエクステリアです。・・・敷地の狭い都市部においても、何がしかの試みをしていくべきで、そのことがさまざまな社会問題の根源にある、人間関係の希薄さを解消することにつながるのではないでしょうか。・・」という意見が印象に残りました。

新建築「住宅特集」2009.10 掲載

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「鴬案」をたずねて 古谷 誠章/NASCA
公園の奥の道路を隔てた敷地に、庭の木立に隠れるようにして、本当に小さく「鴬庵」が佇んでいた。庭の樹木を眺めながら玄関に近付くと、記事にあった框のないガラス面に見える玄関扉がある。中に入ると壁面に映ったトップライトの美しい光が陽炎のようにゆらゆら揺れて出迎えてくれた。室内はゆったりしたほどよい大きさの空間で、作者の意図通り外観から想像するよりずっと大きく思える。

新建築「住宅特集」2009.09 掲載

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伝統構法について
もう十四年も前のことになりましたが、阪神・淡路大震災の日、自宅で被災しました。私の家と隣のプレハブ住宅以外周囲には大正十二年頃に借家として建てられた日本家屋が建ち並んでいました。プレハブ住宅は階段がはずれて50㎝程床が傾き、古い家屋は壁が傾き一部屋根が潰れたところもありましたが、亡くなった方はおられませんでした。

新建築「住宅特集」2009.08 掲載

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「愛宕の山荘」をたずねて 武富 恭美/d/dt Arch.
軽井沢銀座からほど近いところに車が一台がやっと通れるほどの小道がある。両側に積まれた石は苔むしており、別荘が点在している。その中のひとつ、木立の中に美しく佇むのが「愛宕の山荘」である。隣家が気にならないように、また木立と苔の美しい庭を部屋から眺められ、斜め向かいの家の庭越しに離山を望めるように、建物は少し道路側に振って敷地奥に配置されている。

新建築「住宅特集」2009.07 掲載

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住宅の内と外
以前建主さんから「これからは防犯住宅が主流になりますよ」と言われたことがあります。この方は風光明媚な土地で、コンクリート造で窓には防犯のための鉄格子を望まれましたが、私にはそのような家はどうしても設計できませんでした。確かに防犯性能など安全に対する備えは必要ですが、あまりに過剰なのはどうか、と思ってしまいます。どこまでが適度で、どこからが過剰かという判断が人によって千差万別だとしても、やはりそう思うのです。

新建築「住宅特集」2009.06 掲載

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「楓燕居」をたずねて 川口通正建築研究所
「囲まれすぎない外部の気持ち良い空間をどうつくり込むか」という自らのテーマに川口さんは見事にこたえ、それ以上の、五感に心地よい空間を生み出した。家全体が中庭を中心に見事なハーモニーを奏でている。

新建築「住宅特集」2009.05 掲載

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家族のあり方と住宅について思うこと
情報化社会といわれる中で、たくさんの情報にさらされ、それを上手に選択することが大切ですが、私の場合、つい自分の好みにあった情報で身の回りを固め、少ない情報の中で生きているように思います。そして難しい論理が苦手な人間が時評することは的外れになりそうですが、「新建築 住宅特集」を毎号読む中から気になる事柄を見付け出し、それらに触れていきたいと思います。

私にとっての建築

エッセイ・コラム

新年にあたって、 今回の設計は前回の設計より少しでも良くなるように、今日の自分は昨日の自分より少しでも高めようと思う。 というのは、建築は、それを設計する建築家の哲学の具現化であり、その人が、生きることをどう考えているかが、そのまま形になってしまうからである。  父の考えが基本に …

佐保会館と雨戸

建築

 佐保会館は昭和3年に奈良女子大学構内に建てられた同窓会館である。このたびの改修工事では1階座敷の庭に面した1本引きのガラス戸と雨戸、北側事務室と和室の引き違いガラス戸と雨戸は現況保存とした。昔からある雨戸は開閉時には、たびたび外に出なくてはならなく大変手間がかかる。また戸は順番 …

心を込めて手をかける

エッセイ・コラム

先日知人から自家製のお米をいただいた。 旨みが凝縮されたような、しっかりとしたおいしいお米だった。 話によると、コンバインを使わず、丹精こめて育て上げたお米を昔ながらに 稲を逆さまにして田んぼに干し、脱穀してあり、手間が3倍かかっているとのことだった。 家づくりも何ヶ月間もの設計 …

庭の桜の木

エッセイ・コラム

私の家はバルコニーくらいの広さの庭に、欅、白樫、桜、金木犀などが植えてある。どんどん大きくなって、お隣まではみ出していくのは、悩みの種だが、一日に何十回と目に映り、心を癒してくれる。台風の時は、暴風から家を守ってくれて心強かったし、夏は樹木の間を渡ってくる風が、涼しくて心地よい。 …